ナデッチの南インドでなんとなく日記

海外行きたいなら絶対に知っておきたい!今すぐチェック!!なんて情報はありません。

ジャミラの話

 

f:id:Nadezhda8:20160424190930j:plain

 

こんにちは、ナデッチです。

 

大学生になった時、一人暮らしを始めたのをきっかけに、

その後、今までいろいろな場所に住んできました。

 

 

それは日本だったり、海外だったりするのですが、

私にはある一つの共通点があって、

なぜか、

 

 

『食べ物のおすそ分けに恵まれる』

 

のです。

嘘みたいな話でしょう?

 

 

特に日本国外ではその傾向がとっても顕著に出て、

いつもいつも ありがたくいただいてます。

 

 

ムスリムの家庭から頂けるものの代表格は

ビリヤーニ。

(日本語で言うなら、炊き込み御飯?)

 

 

チキンやマトンとともに炊き込まれてて、

手間が2重3重にかかったそれは、

辛いけど各家庭の味が絶品で、

付け合わせのライタ

(ヨーグルトにキュウリのスライスなどと和えたもの。)

と、ハフハフ

 

 

そんな、ビリヤニの香りが、どこのお家からか漂ってくると、

思い出す人がいます。

 

 

 

 

ドンドン。

キッチンは壁一枚隔てて共通通路につながっていたのですが、

その窓を誰かが叩いてる。。。。

 

何?

と開けると

 

 

「トーチ。」

 

 

 

。。。。??たいまつ??

 

(トーチはイギリス英語で懐中電灯を意味します。)

 

 

隣の隣のうちのおばちゃん、もしくは息子が

よく懐中電灯を、こんな風に借りに来ました。

 

 

ある時は

 

ドンドン

「カプシガン。(を くれ)」

 

 

。。。。(ーー)

(ちなみにピーマンのことね。)

 

 

ない時は、「ない」と断ってました。

 

 

ある時は、そのおばちゃんは

夜分に高校生の娘を連れてイキナリやってきて、

「お前のうちの防犯がちゃんとしてるか見てやろう」

と言うのです。

 

 

ええ?いや、ノーセンキューだけど、

と言っても通じず、

一通り家の中を見て、満足した彼女は

そのまま自分の家へと戻っていくのでした。

 

 

彼女には4人の子供がいて、

子供、と言っても、上はもう

30近い20代の娘(ちなみに家事手伝い)

年も私よりずっと上なのだろうな、

と勝手に思ってたら、

40代。私との年の差8歳。

 

 

 

今ではインドの結婚年齢は引き上げられて、

男は21歳、女は18歳から。

 

だけど、但し書で、ムスリム女性は15歳から

結婚OKだそうな。(つまり、以前はもっと低年齢婚okだった)

 

ヒンドゥーやクリスチャンと比べても、

ムスリムの女性は嫁ぐ年齢が若干若い印象。

 

 

なので、彼女の様な40代女性なんて、

嫁いだのは絶対10代。16とか。。。

 

(ちなみに近所のママ友のお母さんも、

14歳で嫁いでいます。。。その娘たちは

24歳くらいで結婚でしたが)

 

 

嫁いだムスリム女性は、外に働きに出ることもなく、

食事の用意と、育児。

 

 

大抵、近所のムスリム既婚女性は

「暇だ。」と言います。

 

 

だから、うちの息子アムーが小さい時など、

「なんでうちにアムーを送らないの?」

(面倒見るから、うちに置いていきなよ)

なんて、

冗談か本気かわからないけど、多分本気で

そんなオファーもらったりしました。

 

 

 

話戻して、

そのおばちゃんの名前は、ジャミラ。

 

聞いた時、ウルトラ怪獣が脳裏に浮かんだのは内緒です。

 

 

いっつもニコニコしてて、

嫌なこと起きてないか?大丈夫か?って

よく声かけてくれた彼女。

 

 

 

ドンドン

「200ルピー(かして)」

 

 

バスやリキシャに乗る際、

小銭ないと相手もお釣りないし、

まあ、困るよね。

 

 

と説明なくともわかるので、

ああ、いいよ。と私も渡しました。

 

 

そういえば返してもらってないなー

まあ、いいや。そのうち。

 

 

それから日が経ち、

 

 

近所の男の子の誕生会に

うちのお子達が呼ばれたある日、

 

 

 

ジャミラはポックリ

亡くなりました。

 

 

「ねえ知ってる?804号室のアンティー(おばちゃん)

さっき亡くなったのよ」

 

 

と、近所のママから言われた時は、

なんの事だか全く理解できなかった私。

 

 

 

「ナデッチの家にも言いに行ったんだけど、

キッチンにいつも電気ついてるじゃない?

でも消えてたから、居なかったと思った」

 

 

この日

いつもお子達に電気つけっぱなしにされて私はそれが嫌で

たまたま小まめに消したキッチンの電気ひとつのせいで、

彼女が亡くなる瞬間に何もしてあげられなかったどころか、

知らせてすらもらえなかったのです。

 

 

 

彼女の長女の

結婚式まであと1週間、という時でした。

 

 

娘の結婚を心配しすぎで脳ストローク

朝、あんなに元気そうに洗濯干しながら手を振ってたのに

嘘でしょ?

 

 

 

これからみんなでランチを食べようとしてた時だったんだ。

カレーは鍋の中に出来上がってて、コトコト音を立ててて、

お米も準備できてて、

自分の白いシャツは、ちょうどアイロンかけ終わったところだった。。。」

 

 

彼女の旦那さんは頭うなだれて、

全て完璧に準備してからイキナリ亡くなってしまった

と、私につぶやきました。

 

 

 

ムスリムは、亡くなると、

故人の故郷へ行き、

亡骸を一枚の布で包んで埋めるそうです。

 

 

近所のどの人も、突然の彼女の死を

惜しみましたが、

 

ムスリムたちは、なぜか笑顔で

「彼女はこれから審判があって、

そのあと、神さまのお側に行くのよ」

って言うんです。

 

 

 

私にはよく分からない世界だけど、

そうか。

。。。。

寂しくなるな。

 

 

 

 

 

 

びっくりしたのは

あれから1年も経たないうちに、

ジャミラの旦那さん、後妻を迎えた事です。

 

 

今まで家事をしてくれてた長女は嫁ぎ、

家の中が回らなくなったからか

ジャミラのママ(おばあちゃん)と、

旦那さんのママ(こっちもおばあちゃん)が

話を進めたんだそうです。

 

 

 

次女が、

今でも時折うちに来ます。

「ペン貸して」

「白いキャミソールある?」

 

そんな遠慮なく訪ねてくる姿に、

亡き彼女を重ね懐かしんでます。

 

 

「初めて、ムスリムという宗教に疑問を抱いたわ。」

 

父親が、妻を失って、こんなにも早く後妻を迎えた事に対して、

次女はポツリとこぼしました。

 

 

私は、なんて答えていいか、宗教的な事はわからなかったけれど、

いろいろな意味で、

「早すぎたよね。」と、返しました。

 

 

 

 

あの200ルピーは、彼女が彼女の神様のとこへ行く

バス代くらいには なったかなあ。。。

 

 

 

 

おいしいビリヤニ頂くと、

これもすごくおいしいんだけど、

ジャミラおばちゃんのが一番だったね!って

今でも子供と言い合うのです。